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囲碁の医学的効用(3)

2014年08月14日 12:57

囲碁の医学的効用(3)

東京都立神経病院 飯塚あい

 このコーナーも第三回目となりました。今回は、2014年7月19日に岩手県大船渡市で行われた「碁石海岸で囲碁まつり」に関するお話をしたいと思います。

 これは木谷実九段の末の息子である木谷正道さんが主催された囲碁イベントです。東日本大震災で大きな被害を受けた大船渡市を、囲碁の力で活気づけようという復興支援を目的として開催されました。背景には、復興の一環として大船渡市を「囲碁のまち」にしようという大きな試みがあります。大船渡市には、碁石海岸という名称の、波によって削られた布や岩の形が碁石に似ているという理由から名前をつけられた海岸が存在します。囲碁に縁のあるこの地を、囲碁の力で活気付けようというのは、まちの特性を活かす素晴らしい発想であると思います。

 このイベントでは、謝依旻女流二冠らによる百面打ち指導碁や、碁盤碁石を乗せて走る囲碁列車、視覚障害者記念対局、各専門家による住まいの何でも相談室など、被災地ならではの企画で目白押しであり、その中で私も「被災地と認知症~囲碁療法の可能性」という講演をさせていただきました。

 講演をするにあたり被災地の方々の生の声を聞き、現状をみせていただいたところ、多くの事実が明らかになりました。特に、私の脳神経内科の専門分野に関連する部分では、震災後、新しく認知症を発症する人や、認知症の症状が悪化している患者さんが著しく増加している現実があります。その理由には、引っ越しなどによる環境の変化、仕事や家族を失うことによる生きがいの喪失などがあります。これらのことで、不安や興奮が生じたり、活動する意欲を失ったり、徘徊するなどという症状が出るそうです。さらに感じたのは、高齢者にとって住みやすい環境とはいえないということです。仮設住宅がどこも似ていて、自分の部屋がわからない、足場が悪いといったことで、ますます外出する意欲を失います。家で無為に毎日を過ごすことは、認知症の発症にもつながるのです。

 これらの問題に対し本イベントでは、悪循環をたち切るひとつのきっかけづくりという目的がありました。今日も囲碁を打つために外に出よう、あの人と対局するのが楽しみだという思いは、被災され様々な思いを抱えている現地のみなさんの生活に、彩りを加えることになるのではないでしょうか。

 今回の碁石海岸で囲碁まつりは、300人を越える大盛況となり、多くの地元の方々に喜んでいただけるイベントとなりました。「囲碁をすることで元気をもらえました」という言葉は、まさに心身のケアという囲碁療法の根本につながることだと感じました。また、それは、人とのつながりが薄れ行く日本、世界の課題でもあります。人々の生きがいをつくり、孤独を防ぐために囲碁を用いる、これは健康増進の他に、防災にもつながることだと感じています。

 大船渡市では、今後小中学校で囲碁授業を開催するほか、旅館、福祉施設、市役所などで碁盤碁石を設置することで、住民がいつでも囲碁を楽しめるよう、まちづくりを進める予定です。ぜひ、機会があれば、囲碁のまち大船渡を訪れてみて下さい。

(「日本の碁」第3号掲載/平成26年8月14日発行)



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